資生堂は2014年12月に中長期戦略「VISION 2020」を発表し、ブランド強化やマーケティング、R&D投資の拡大、組織・人事制度等の全ての領域にわたる変革に着手した。
しかし、人は誰しも自分に変化を求められる際には逡巡を感じてしまうものでもある。
この変革を実現できるかどうかは、社員の「心に火を点けられるかどうか」だと考えているという。
そのために今、資生堂では、全ての経営リーダーの最重要事項として、自分のチームや部下の「心に火を点ける」リーダーシップを求め、そしてこれを実現させるため、トップ層から始めた人材育成改革を進めている。
この改革の責任者であり、人事領域を担当する資生堂 執行役員常務の青木淳氏に、現在の取り組みと手ごたえ、そして人事のあり方についてお話を伺った。
「VISION 2020」が目指すのは、資生堂の原点の姿を取り戻すこと
加島: 資生堂様が2014年に打ち出した「VISION 2020」は、資生堂グループ全体のあり方を見直す大変革と感じます。この改革によって目指しているものをお伺いできますか。
青木: 「VISION 2020」が目指しているのは、資生堂の原点の姿を取り戻すことです。2020年に何らかのポジション、
例えばグローバル何位といったポジションを取ることを目指しているのではありません。
2015年には化粧品メーカー世界第5位にランクされましたが、それも目指した結果というよりも、歴代経営者達の「先見の明」の結果だったと思います。資生堂の海外事業の着手は早く、最初の販売拠点を台湾に出したのが1957年です。また、本場フランスにフレグランスの企画・開発・販売を行う子会社を設立した際には、現地の流儀で事業を展開しました。これは今、グローバル化のために日本企業に足りないと指摘されている行動です。
そもそも資生堂は日本で初めての洋風調剤薬局として誕生し、その後も健康的な日焼けした肌を強調した広告を出したり男性化粧品を打ち出したりするなど、社会にインパクトを与えてきました。そんな挑戦がなければ145年間も存続できないでしょう。資生堂は145年前のレガシーを守ってきた企業ではなく、常に環境の変化の中で自己変革をする力を持っていた企業です。だから今があるのです。