Hondaのグローバル体制は、「自主自立」から「協調と連携」へ。リーダーの育成が鍵

電動化や自動運転の登場など、大きな変化が起こりつつあるモビリティ業界。この変化は世界中に影響を及ぼさざるを得ない。今、市場が成長している最中であるアジア現地では、この変化をどうとらえ、対応しようとしているのか。また現地の戦略とグローバル戦略の中で、人材育成の課題をどのようにとらえているのか。
本社人事としてグローバル人材戦略を主導し、タイ現地法人に人事として赴任。その後マレーシア現地法人にManaging Directorとして赴任された安田啓一氏に、お話を伺った。

日本人か現地人材か、本社か現地法人か、ではなく
グローバルでの「協調と連携」

田口: モビリティ業界では「CASE(Connected, Autonomous, Shared, Electric)」というキーワードが登場しています。このキーワードの意味を知るだけでも、業界全体が大きな変化を迎えつつあることがわかります。安田様はアジアで、どのような変化を感じていらっしゃいますか。

安田: CASEに代表されるような先進技術を搭載した四輪や二輪が走り回る、あるいは部品などのサプライヤー構造が急激に変化するといった大きな波は、アジアではまだ先の話というのが実感です。今、本格的なモータリゼーションを迎えたアジアでは、廉価で高品質な商品であることが重要です。これまで同様、そうした商売の基本をしっかりやっていくことこそ大切、という状況です。
しかし一方で、アジアでも複数の国の政府が自動車の電動化に向けて動き始めているのも事実です。目の前に広がる光景を見ていると「本当か?」と思ってしまうのですが、手をこまねいているわけにはいきません。やがて来る電動車やコネクテッド車、自動運転車の普及に備えて、政府に働きかけ、一緒にあるべき規制やインフラ作りをしていくということが、今の業界全体の課題です。

では、それをどうやって進めていくか。かつては、それぞれの国において現地人材が主導して進めるのが効果的であり自然であると考え、国ごと、あるいはリージョンごとに「自主自立」した体制を目指していましたが、電動化のような大きな話になればなる程、実は他国との連携、例えば一日の長がある国が主導、あるいは後方支援するといったことが必要になります。

また、先進技術の開発という部分については、それぞれの現地法人(以下、「現法」)で独自に対応できるパワーはありませんし、そもそも非効率です。そのため、例えば先進のモノづくりであれば日本で行います。ただし、そこには世界中から技術者を集めます。そして、その技術者たちがそれぞれの国に技術やノウハウを持ち帰るのです。

現在は、日本人がやるか現地人材がやるか、本社なのか現法なのかという捉え方ではなく、それができる体制、つまり、グローバルで「協調と連携」して前に進んでいくことを目指しています。

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